DISEASE OF ORTHOPEDICS

病気の解説一覧

病気について

CASE

椎間板ヘルニア

背骨は椎骨(ついこつ)という骨が集まって構成されており、椎骨の間には椎間板(ついかんばん)と呼ばれるクッションが存在します。この椎間板が本来の位置から飛び出して脊髄を圧迫する病気が椎間板ヘルニアです。 椎間板ヘルニアを生じた動物では、痛みや手足の麻痺などの症状が出ます。稀ではありますが、脊髄軟化症と呼ばれる病気を併発し、命に関わってしまうこともあります。 椎間板のクッション性は加齢とともに失われ、ヘルニアが生じやすい状態に変化します。しかしミニチュア・ダックスフントなど一部の犬種(軟骨異栄養犬種;なんこついえいようけんしゅ)では、幼少期から椎間板がクッション性を失い、若くして椎間板ヘルニアを生じやすいことが分かっています。 手術では、背骨を部分的に削って飛び出た椎間板を取り出し、脊髄の圧迫を解除します。

当院グループではこれまでに800件以上の手術を実施しており、国内有数の症例数を有しています。

前十字靭帯断裂

膝の関節は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)、それらをつなぐ複数の靭帯(前/後十字靭帯・内/外側側副靭帯)で構成されます。犬では、このうち前十字靭帯の損傷がよく生じます。 前十字靭帯を損傷すると、足を完全に挙げしまう、足をつくけれどもしっかり体重がかけられない、といった症状が出ます。 人の前十字靭帯断裂は、激しい運動や事故などの強い力がきっかけで生じます。一方、犬では加齢と共に前十字靭帯が弱り、日常生活の中でも前十字靭帯断裂が生じてしまいます。 

当院では、TPLO法あるいは関節外法と呼ばれる方法で前十字靭帯断裂の治療を行います。当院グループでは、これまでに700件以上のTPLO法を実施しています。

膝蓋骨脱臼

膝蓋骨(しつがいこつ)は俗に「膝のお皿」と呼ばれる小さな骨です。この膝蓋骨が、本来収まるべき太ももの骨の溝(滑車溝;かっしゃこう)からズレてしまう病気が膝蓋骨脱臼です。膝蓋骨のことを英語でPatellar(パテラ)と呼びますが、日本では膝蓋骨脱臼そのものがパテラと呼ばれることもあります。ごくたまにしか脱臼せず、脱臼しても自然に元の位置に戻るものから、常に脱臼しており全く戻らないものまで、膝蓋骨脱臼の重症度は様々です。 犬や猫では、成長とともに自然に膝蓋骨脱臼が生じてしまうことがあります。統計的に、怪我で膝蓋骨の脱臼が起こるよりも、自然に膝蓋骨の脱臼が生じることの方が多いことが分かっています。 膝蓋骨脱臼を有する動物では、スキップする、ガニ股で歩く、足を上げたまま歩く、といった様々な症状が生じます。軽症の動物では、症状がほとんどない、あるいは飼い主様が気づかない程度の症状しか出ないこともあります。 当院では、脱臼の重症度や症状の程度に応じて、手術が必要かを個々の動物ごとに判断します。 手術は、
・膝蓋骨を内側・外側から引っ張っている組織のバランスを整える
・滑車溝を深くする
・膝蓋骨から伸びた靭帯が付着する、すねの骨の一部を動かす
等、複数の術式を組み合わせて実施します。

当院グループでは、これまでに 400件以上の膝蓋骨脱臼整復手術の実績があります

骨折

骨折は馴染みのある言葉だと思いますが、専門的には「骨の連続性が部分的に、あるいは完全に断たれた状態」と定義されます。 骨折した骨の大きさにもよりますが、折れた場所を痛がる、折れた足に体重をかけられないといった症状がでます。 交通事故などの特殊なきっかけがなくても、小型の動物では家庭内のちょっとした段差の昇降や、抱っこからの着地失敗など、日常生活のなかで骨折してしまうことも一般的です。 人間の骨折はギプスや包帯で治すイメージが一般的かもしれません。このような治療を保存療法と呼びますが、じっとしていない動物ではなかなか難しいのも現状です。手術では、金属製のインプラント(”プレート”、”スクリュー”と呼ばれる板やネジ、”ピン”と呼ばれる釘など)を用いて、折れた骨を補強し、骨がくっつく(癒合する)のをサポートします。当センターでは、これまで700件以上の骨折の治療実績があります。

関節炎

骨同士の連結部分を関節と呼びます。手足の関節の表面は軟骨で覆われており、健康な状態では痛みなくスムーズに動かすことが可能です。 しかし、何らかの理由で関節が痛んでしまうと、足をかばう、動きたがらなくなる等の症状が出ます。 関節炎の原因はさまざまで、
・前十字靭帯断裂や膝蓋骨脱臼、肘関節形成不全や股関節形成不全など物理的な関節の異常により、軟骨がすり減って生じるもの = 骨関節炎・変形性関節症
・本来外敵と戦う役割のある「免疫」の異常により、自身の免疫機能が自身を攻撃してしまうもの = 免疫介在性関節炎
・細菌や真菌(カビの一種)が感染して生じるもの = 感染性関節炎
などが挙げられます。 当然、原因によって対処方法は異なるため、正確な診断をして治療にあたることが大切です。

内側鉤状突起分離

肘は、上腕骨(じょうわんこつ;二の腕の骨)・橈骨・尺骨(とうこつ・しゃっこつ)という3本の骨が複雑に関節して形成されています。尺骨の内側には、内側鈎状突起と呼ばれるでっぱりがあり、上腕骨の受け皿となっています。大型の犬では、成長期に内側鈎状突起が傷んでしまうことがあり、重度の場合は尺骨から分離してしまいます。これが内側鈎状突起分離です。 前足をかばう症状が一般的ですが、その場合重たい頭をヒョコヒョコと上下して歩く、点頭運動(ヘッド・ボブ)と呼ばれる歩き方が生じます。ただし、両側の前足とも異常がある動物では、この症状が明らかでないこともあるので注意が必要です。 原因は未だ究明中ですが、内側鈎状突起に過剰な負荷がかかって生じる可能性などが指摘されています。 手術では、分離した骨片(および内側鈎状突起の一部)をとりのぞき、痛みの緩和を測ります。内側鈎状突起は比較的小さいため、単純なレントゲン検査では診断がつかないこともあります。そのため、正確な触診やCT・関節鏡を用いた精密検査が重要となります。

レッグ・カルべ・ペルテス病

レッグ・カルベ・ペルテス病は、太ももの骨(大腿骨)の先端(大腿骨頭)が壊死をしてしまう病気です。「大腿骨頭虚血性無菌性壊死症」という難しい名前でも呼ばれます。 発症すると、壊死の程度に応じて足をかばうようになります。かばっている肢の筋肉が落ち、飼い主様がみてわかるほど左右で足の太さが変わってしまうこともあります。 「虚血」、すなわち血液供給の不足に起因すると考えられていますが、そもそも血液供給が不足する理由を含め、はっきりした原因はわかっていません。 手術には関節を人工物に置き換える股関節全置換術のほか、壊死した部分を含め骨の一部を取り除き、痛みをとってあげる手技(大腿骨頭切除関節形成術)が挙げられます。当グループで大腿骨頭切除関節形成術を実施した後は、理学療法(リハビリ)を実施することで早期のより良い機能回復を目指しています。

変性性脊髄症

変性性脊髄症は、脊髄が変性し機能障害を生じる病気で、腰のあたりの脊髄から始まりゆっくりと全身に進行します。 最初は後ろ足の症状から始まり、爪を擦って歩く、ふらつくなどの異常が現れます。2-3年かけて徐々に症状は悪化し、後ろ足の麻痺、前足の麻痺へと進行します。最終的には呼吸能力に関わる首の神経まで異常が進行し、呼吸不全で亡くなってしまいます。よく発症する犬種は限られており、日本ではウェルシュ・コーギーの患者さんに多く遭遇します。 脊髄が変性する原因はまではっきり分かっていませんが、”SOD1”というタンパク質を作る遺伝子の変異が関係していると考えられています。 残念ながら、現在この疾患を根治させる方法はありません。当院グループでは理学療法(リハビリ)を実施することで、少しでも生活の質を維持・向上させられるよう試みています。

猫の骨折

犬や人と同様、猫も骨折することがあります。昔は家の外で交通事故に遭い骨折する猫が多いましたが、室内飼育が増えるにつれその割合は減ってきました。現在は、マンションなど高い場所からの飛び降りや、キャットタワーからの転落などが代表的な原因として挙げられます。 猫は運動能力が高い動物のため、一瞬の跳躍で手足には強い力がかかります。そのため、骨折を治療する際にはしっかりと固定する必要があります。また、猫の骨はその特性からバキバキに割れてしまうことも多く、犬の骨折治療で一般的な金属インプラントであるプレートとスクリューが設置できないことがあります。そのような場合、当院グループでは「創外固定」と呼ばれる、金属の支柱を用いて骨折部を皮膚の外から安定させる方法で治療を実施することも可能です。

治療法について

METHOD

TPLO法

TPLOは犬に多い前十字靭帯断裂の治療手技です。
従来、前十字靭帯断裂の治療は切れてしまった靭帯の代わりとなるような人工物(糸)を設置する方法が主流でしたが、現在はTPLOで治療した方が機能回復の速度や最終的な回復の程度が良好であることが多くの発表から裏付けられています。
TPLOは脛骨高平部水平化骨切り術(Tibial Plateau Leveling Osteotomy)の頭文字です。文字通り脛の形を矯正する手術で、手術後は前十字靭帯がなくても膝が安定するようになります。なんだか難しく聞こえてしまいますが、診療ではわかりやすく図を用いて説明しますのでご安心ください。
当グループの研究では、TPLOを50症例以上経験している術者は⼿術時間が顕著に短縮し、動物に与える負担が減ることがわかっています。TPLOは骨を切って動かすというある意味大胆な手術であり、⼿技に慣れた術者が⼿術を⾏なわないと、術後に大きな合併症が起きてしまうリスクがあります。

整形外科・リハビリのプロを目指すなら ONE for Animals 採用特設サイトへ
整形外科・リハビリのプロを目指すなら ONE for Animals 採用特設サイトへ

整形外科を通じて、
動物たちのために尽力します。

〒105-0014
東京都港区芝2丁目29-12-1F

第一京浜:芝四丁目交差点の側
首都高(環状線):芝公園出入口より車で3分
最寄駅:三田駅より徒歩約5分

診療時間
9:00〜12:00

休診日:なし

※午後は手術優先で診察はお受けできないことがありますが、 緊急時にはお電話ください

※当院は予約診療制です。 必ず事前にご連絡のうえ、ご来院ください。

飼い主様へ 獣医師様へ